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インタビュー2022.1.12

「あこがれ」福本眞久先生特別インタビュー

まずは簡単な自己紹介からお願いします。
(福本)福本眞久(ふくもとまさひさ)と読みます。1996年7月11日生まれの26歳です。
福本眞久 プロフィール

2015年 初めて漫画を描く
2017年 第71回ちばてつや賞一般部門『女子大生と1円玉の神様』佳作
2018年 モーニング「第6回THE GATE」『激闘!焼き鳥フェンシング』奨励賞
2019年 第80回ちばてつや賞ヤング部門 『真夏のJKリフレ』準優秀新人賞
2020年 講談社アプリコミックDAYSにて『悪魔と人との間』(全2巻)を連載するもあらゆる不足を痛感し精神を病む 自ら打ち切る
2021年 別名義でエロ漫画家になる
Twitter https://twitter.com/frozen_pump

『ボヘミア』で執筆していただいた『あこがれ』という作品についてお話ししていただいてもよろしいでしょうか。

『ボヘミア』vol.1より福本眞久先生・作『あこがれ』

(福本)『あこがれ』を描く前の話なんですけど2020年にちょっと連載をしていたんです。だけどそれがもう本当にセールス的な意味でも僕的な意味でも大失敗しちゃって自分から打ち切ったぐらいで。それで気持ちがメッタメタにされて、それから2年ぐらい一般漫画を描いてなかったんですよ。そんな時にボヘミアから描いてくれないかという連絡というか流れがあって「どうしようかな~」と思っていたんですけど。去年の7月に日比谷のよみうりホールだったかな?で「トリュフォー」というフランスの映画監督の映画祭というか、14本ぐらいの作品が映画上映されていたんです。それを全部観に行ってそこで『あこがれ』という映画があったんですよ。川勝徳重先生が気づかれていましたがこの作品はそれのオマージュなんです。
(福本)その映画を観てめちゃくちゃ感激して漫画描きたいなーと思って作ったという感じです、最初は。
福本先生は映画を普段観られるんですか。
(福本)全然観ないですね。好きな映画監督とかはいるんですけど好きな映画を何回も観るくらいで何千本も観るとかはないです。
今オマージュという風にお伺いしましたがあの作品はご自身の子どもの頃の実体験なんかも元となっているのでしょうか。
(福本)小学校4年生くらいの時に中学2年生くらいの女の子がすごく好きだったんですよ。だから追いかけていた記憶はあるのでそれが元にはなってるのかなって。
(福本)今年の7月ぐらいに奄美大島の方に旅行に行っていて、実は舞台はその辺なんですよ。だから結構田舎っぽい感じというか、東京では少なくともないじゃないですか。本州ではないです。何て言うのかな、可愛い女の子と旅行行きたいじゃないですか。あと僕は先輩から好かれるみたいな後輩ムーヴみたいなのが全然できないんですよ。だから先輩に愛される人がすごく羨ましくて、年上の人にかまってもらえて「どっか行こうぜ」みたいなのをされたことがないので。『めぞん一刻』という高橋留美子先生の漫画があるじゃないですか。その中で五代裕作くんという大学生の男の子が小学生に「海行くか」となって、めっちゃ子どもが喜ぶみたいな場面があって。それを見てなんて素晴らしいシーンなんだと思ってそれをちょっとやりたかったというか。
(福本)誰が言ってたかな。多分林士平さん(集英社『ジャンプ』の編集者)だと思うんですけど、短編漫画の作り方みたいなもので主人公にとって人生でトップ3に入る出来事を描けみたいなのがあったんですよ。それは結構あってるなと思ったから主人公にとってね。好きになった女の子となんか知らんけどドライブ行くことになるって、少年にとっていい記憶に残るだろうなと思って。そういう話。
主人公はあの子どもですが、二人のカップルもいいキャラを醸していました。女性の方がどんな人か気になったのでもっと出番がみたいです。いつか「二人のその後」みたいな物語りが見たいです。シャネルズの「Tシャツに口紅」みたいなカッコイイマンガを読んでみたいです。
(福本)シャネルズのその曲をさっき聞かせてもらったんですけどなんか僕の漫画と全然違くない?大丈夫かな。そういう感じしましたか?
あの男と女のストーリーという風に見ればアフターストーリーもあるのかなって…。
(福本)なるほどね。描くことはない気はしますね。なんでかというと僕、女性のことが全くわからなくて。というのも僕は女性との関わりがほとんどなくて、小学校の頃は好きな子がいるみたいなのはあったんですけど中学校はめっちゃ受験勉強しててそういうのはなかったし、高校も男子校だったので女性と関わることがなかったからあんまり女性のことがわからないんです。だから今回の漫画もヒロインの方ってキャラクターがないじゃないですか。僕も女性がわからないからあんまりわからないように描いちゃった。そういうのに惹かれるのかな僕は。
ミステリアスな女性像ということでしょうか。
(福本)そう。顔もそんなに描きたくなかった感じ。
思い出的な意味で記憶の片隅には残ってるけど顔は忘れちゃってるから顔がわからないように描いたのかとも受け取れました。
(福本)あー、それもいいなあ。はははは。
だから「憧れ」みたいな…。
(福本)なるほどね。そうかもしれない。なんだろうね…でもいいわ。僕があんまり解説とかしてもつまんないだろうから。やめときます。すいません。
ぜひ聞きたいですね。
(福本)この男の子は恥ずかしがり屋なのでビデオカメラ越じゃないと顔が見れない。ビデオカメラ越しに女の子の顔がやっと見れたわ、みたいな。それで可愛すぎて眼鏡が弾ける。いい漫画だなこれ。多分コミュ障みたいな感じで描きたかったと思うんでね。この男の子はすごく母性を求めてる子でお母さんがいないし、両親が出てこないじゃないですか。まあ色々設定はあるんですけどこの二人に母性を求めていたのかなぁとか思いながら。
(福本)それがこんな子なんで母性が分からなくて「すきだー」「結婚がしたい」って思っちゃって。そういう勘違い、いいじゃないかみたいな感じで作りました。
今回の作品にかかわらず漫画表現で大事にしていることはなんでしょうか。
(福本)やっぱり当たり前の話なんですけどまず最後まで読んでもらえるか、というのがすごくあります。面白いかどうかは結構後の問題というかまず読みやすくて最後まで読めるかという。僕は自分に全然自信がないので最後まで読んでくれるかすごく不安なんですよ。僕も人の漫画読んでつまんないなーとか面白くないなーと思ったらすぐRead Nowのを止めちゃうので。今回の漫画を読んでくれた人は分かるかもしれないですけど極力セリフを減らそうと思って作ったので半分ぐらいのページにセリフがないんですよ。ある意味本当に頼むから最後まで読んでくれみたいな。
ある意味、漫画の真理をついたCommentですね。
(福本)でもエンターテイメントなので読者のために作るというのがまず一つあると思うんですよ。自分が描きたいものを描くというのは思春期の延長で、お金をもらって人に読ませるんだったら人の事を考えないとなって思いませんかー?みたいな。漫画もコミュニケーションだし人に伝えるものだから。伝わらなくてもいいと思ってる作り方をする漫画もかっこいいなと思うしセンスがいい人のやってるそれはすごく好きなんだけど。なかなかできることじゃないから否定はしないけど難しいねって思う。
福本先生の絶対に最後まで読ませるという描き方もなかなかできるものじゃない気がします。
(福本)今回の漫画は出来ているかどうかは正直分からないです。最後まで読みましたか?
伝わらない漫画を描くより伝わる漫画を描く方が難しいことだと思います。
(福本)そうですか?ありがとうございます。
『ボヘミア』の気になる作家はいますか。
(福本)この『ボヘミア』に出そうと思った動機のひとつに亜蘭トーチカ先生とか不吉霊二先生とか大山海先生とかの存在があって。同年代の多分1996年~8年あたりの人たちだと思うんですけど、3人とも僕のできないことができる人たちで特に尊敬していて、1回ぐらい同じ雑誌とかに載りたいなという気持ちで作りました。不吉霊二先生の漫画は絵がめちゃくちゃ上手くなっていて最初のカラーのイラストとか頭がビビって痺れました。めちゃくちゃ良いんだからって。

『ボヘミア』vol.1より不吉霊二先生・作『タレント』

可愛い女の子を描く情熱はどんなものですか?
(福本)映画のキャストって金とかスケジューリングとかの都合で可愛い女の子を出したくても出せないっていうのがあると思うんですよ。わからないけど。でも映画と違って漫画って画力でいくらでも描けるじゃないですか。できないことはできないかもしれないけど。だけど「精一杯可愛く描くべきなんだ」というのがあって、そこだけは頑張るべきじゃないかって自分に言い聞かせて描いております。
逆に男性キャラはどうでしょうか。
(福本)男性キャラね。何だろう。うまく言えないけど、街を歩いてて遠くにいるかっこいい男とかを眺める瞬間ってあるじゃないですか。あの人かっこいいなって。そういう風に読者が思ってくれるようなキャラを描けるといいなみたいな。やっぱり少なからず何か魅力的に思ってもらえるように描きたいよね。理想論ですけど。
今後の展望などはございますか。
(福本)展望…今ちょっとエロ漫画でご飯食べているんですけど、すごく楽しいんですよ。「多分生涯エロ漫画描けるなー」って思いながら描いてます。あと今26歳なんですけどあと2回ぐらい一般漫画連載したいなと思っていて。そこで自分の適正というか向いてるなぁみたいな、向いてないなぁみたいな、向いてないなぁと思ったら一生エロ漫画描きますし。リベンジリベンジって感じっす。
福本眞久先生本日はどうもありがとうございます!
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