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インタビュー2022.1.14
「犬を捨てた日」西田荘先生特別インタビュー
西田荘 プロフィール
Twitter @hikariusagi2
- まずは簡単な自己紹介からお願いします。
- (西田)漫画作品の受賞歴みたいなものは『モーニング』という雑誌で月例賞をいただいたり、2019年のちばてつや賞で『本のある部屋』という作品が大賞に決まったりとか。あと『ボヘミア』で載せてもらったぐらいの感じです。
- 『ボヘミア』で執筆していただいた『犬を捨てた日』について
- (西田)週刊連載の先生のアシスタントに入っていた時にネームがなかなかできないという話をして「どんな内容でもいいから月一くらいで10Pぐらい描いてみたら」というアドバイスを先生から頂いたのがきっかけでした。アシスタントの仕事に就くまでまったく漫画を描いてこなかったので「漫画を、しかも10Pなんて無理です!」ってしぶっていたんです。そうしたらどういうわけか週刊連載を抱えているのに先生が自分も月イチで10ページ描くよ!という話をしてくださって…そこで自分が「描けないです」なんて言ってるわけにもいかないなと思ったんです。それで10ページぐらい月に一度描いていた漫画群の一つが『犬を捨てた日』だったんですよね。本当にその先生にはたくさんのものを与えてもらって感謝してもしきれないです。当時の周囲の感想は「やりたいことはわかるけど載せてくれる雑誌がないよ」という感じでした。編集の人にも「犬を殺さない方向にしない?」みたいな感じで形になることがなくて、載せましょうってなったのはボヘミアさんだけでした。
- その頃の漫画に対して思っていたことやアシスタントになるまでの経緯などあれば聞かせていただけますでしょうか。
- (西田)高校があまり行けなくなってしまって単位が足りなくなり中退したんです。そこから家にずっといたり、フラフラしていたんですけど何もすることがなくて。ある日、友達が「絵が好きだったら漫画のアシスタントに応募してみたら」みたいな感じで軽く言ってくれて。「そういうのもあるのかー」みたいなノリで応募してみたらいろんな職場にアシスタントで入れていただけるようになったという感じですかね。
- 絵を描くのは好きだったんですか?
- (西田)そうですね。絵を描くことは前から好きだったんですけど小学生のころ「漫画家になりたいなー」とぽわーんと思ったのはその時期特有の「宇宙飛行士になりたいなー」みたいな現実味のないノリだったんです。だけどやることがないなら私にできることなら何やってもいいかなと思って応募をしました。
- 『犬を捨てた日』は何作目に描かれた漫画なんですか?
- (西田)その先生とやり取りをしていて2作目にできた漫画ですかね。先生の名前を出すのは迷惑になるかもしれないので秘密でお願いします。
- 制作における自身の重要な体験はありますか?
- (西田)中学の終わりから高校を中退するまでずっと引きこもりで学校に行けなかったんです。ただただ「これからどうなっていくんだろう」という気持ちで過ごしていました。だけどそういった期間に映画や漫画をたくさん観ていたことが自分の中で大きかったのかなーって思っています。当時は人間不信になっていた時期で人と関わりたくなかったんですけど、本当は誰かと話したかったし寂しかったみたいな気持ちもあって、そういった人間とのコミュニケーション不足をそこで解消していたところがあるのかなと思いました。創作物って直接自分を傷つけてくることはないけど聞き手側に伝えたいこととか言いたいことを一歩通行ではあるんですけど話しかけてくれるものだから、相手の話を聞くコミュニケーションと似てるというか、そういうところに救われていた時があります。今でも自分の好きなものとか、何でもいいんですけど自分の考えとかを正直に話しかけてくれるような作品が好きで、自分も正直に作品を作れたらいいなと思っています。
- 特に印象的な映画作品や漫画作品はありますか?
- (西田)色々あるんですけど引きこもっていた時期とかは自分と同じように鬱屈している若者の話にシンパシー感じて読んだりしていました。『ザ・ワールド・イズ・マイン』の「トシ」とかすごく好きで。ああいう「一見郵便局員として普通に過ごしているけど、悶々とした鬱屈した気持ちを抱えたキャラクター」とか、ある時に自分の中にある暗くて汚い気持ちを正直に話してくれるものが良いですね。何かわからないけど満たされなくて、今すぐ何かひとつでも確かなものを手に入れたくてしょうがない。今すぐじゃなきゃ嫌なんだ!みたいな、自分が何者でもない時の飢えているような感覚にすごく共感しました。
- これからどんな作品を作りたいですか?
- (西田)もちろん編集さんと話し合ってですけどなるべく自分の好きじゃないものを描きたくなくて、正直な気持ちを分かりやすかったり面白かったりする形で漫画にできたらなと思います。抽象的な感じですいません。
- 今までの人生で漫画に限らず印象的な出来事などはありますか?
- (西田)小学生の時に車に轢かれて2週間ぐらい入院していた頃の話なんですけど、その間食べるものがおかゆとかまずいものばっかりで。「今食べられないものを食べたいな」という気持ちが強くなった時に食欲がひどくなってしまってノートとかに食べ物の絵を沢山描いていた時間がありましたね。中学の時とかノートに女の子の裸ばっかり描いていたし。そういう絵を描いて煩悩みたいなものを満たしていた感じはありましたね。
- 女の子を描くことについて考えていることはありますか?
- (西田)絵を描いてる時は男を描いているより女の子を描く方が楽しくて、山本直樹先生のアンニュイな雰囲気をまとった女の子を量産したいみたいな気持ちはありますね。ああいう実在感のないというか、生気のないような女の子も好きなんですけど結構生々しかったり見ていてみっともないところもある女の子を描くのも好きで、色んな女の子を描きたいですね。
- 現在抱えている強い気持ちなどはありますか?
- (西田)絵を描くのが遅いのでもっと早く描けるように頑張りたいです。
- 『ボヘミア』で気になる作家や作品などはありますか?
- (西田)いっぱいあるんですけど雑島七輪先生のマンガをvol.1で読んだ時にああいう感じの、なんというか読んでいるうちに夢と現実がごっちゃになっていく「体感」になっていくもの、寝る前に読みたい話みたいな漫画がすごく好きで、そういう雰囲気の漫画が久々に読めて「いいなー大切にしたいマンガだなあ」と思いました。雑島七輪先生のマンガもっと読みたいです。
- 西田荘先生、本日はどうもありがとうございます!
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