こんにちは。
以前、まんだらけスタッフが選ぶ2015年ベストコミックという企画で「静かなるドン」を挙げさせていただいたのですが、今回は「静かなるドン 完全データブック」をご紹介します。
実業之日本社 静かなるドン 完全データブック
いわずもがなでこちらは全108巻で完結したあの「静かなるドン」のデータブックですが
100巻記念で発行されたもののため内容的には最終話分まで入っているわけではありません...
ただ、それを補ってあまりある魅力のある本です。
データブックというと大抵の内容は
登場人物の大まかな紹介だったり、人物相関図、物語のあらすじ、
扉ページ振り返りだったりします。
ただ、データブックというだけあってまず、ある程度巻数が出ている作品でないと出すにも出せずですしなにより人気作でないとそんなもの発行してもらえません。
静かなるドンのデータブックが出たというのはなるべくしてなった、当然の事といえるでしょう。
そして、数多のデータブックの中で異色なのはこちらの本、
作者の新田たつお先生のインタビューに 相 当 の ページ数が割かれているという点です。
ここが本当に素晴らしい。
さらに、新田先生のお写真も盛りだくさん。
このご時勢に顔出し云々とか全然気にしていないおおらかな感じがさらに素晴らしい。
てんこ盛りの大サービスなのです。
静ドン好きの方でもこの本の存在を知っている方はあまり多くなさそうに思い
紹介させていただこうと思った次第です。
目次1
目次2
折り込みのカラーページ
新田先生ロングインタビューのカラーページ
キャラクター紹介コーナーの醍醐味、こんな人いたっけ?のページ
新田先生インタビューの記事は数えてみたところなんと18ページでした。
(1ページ静也フィギュアの写真も含むなので正確には17ページかもですが)
小学5~6年生の頃から漫画を描き始め、ジャングルジムのてっぺんで「俺は、第2の手塚治虫になる」と叫んだそう。
引用-その頃の子どもの大抵はそうだったんだが、途中で誰もが「手塚治虫」になれないことに気づいて、挫折する。しかし、自分はあきらめることができなかった。-引用終わり
この、冷静に自分を見つめる姿と、あきらめることができなかったという熱に私は
果てしの無いカッコ良さを感じます。
一方、子ども時代の体験として、お父様が経営していた会社のトラブルに巻き込まれ一切合切を無くし、2年間ひと言も喋らず、結果、台所にのみ興味のある人となってしまいいつもなにかしら探しては
食べるだけの状態になってしまったと。何度か(止めてもらいたいというところからいつも人前で)自殺騒ぎも起こしており
引用-母親は一切止めようとしない。死んでみせろと放り出す。そのやり取りから、子どもの俺は人生の悲哀を学んだ。-引用終わり
ちなみにこのエピソードは先生の1975年に少年マガジンに掲載されたデビュー作の「台所の鬼」として成っているそう。
自分ならこの壮絶さを糧にできるだろうか?ここが非凡と平凡、制作者と非制作者の違いかと思います。ただ私は個人的な好みとして、幸せの中から生まれた創作よりも、不幸せや怒りから生まれた作品の方が好きだというかほぼ後者にしか基本的には興味がないので、そういう意味でも合点がいきました。
静ドンのキャラクター制作についてもかなりフランクに言及されており
引用-俺はもともとギャグ漫画を描いていた。そのせいもあって、馬場花子なんかを描いている方が乗るし、楽に描ける。もっとも、俺のイケメン嫌いもあるのかもしれない。若い頃は世の中は自分中心に動いていると思っていた。女性も当然、俺のところへ来てくれるハズなのに、みんなイケメンのところにいく。そこで初めて現実に目覚めて、以来、女にモテる男が嫌いになった。-引用終わり
確かに馬場花子のページはこの人が主人公だっけ?というくらいに長~いところがありますし、
物語を通して見ると相当頻繁に出てくるキャラですし、お気になんだろうなぁ~というのは感じていたのでこれまた納得です。
目次の通り、通常のデータブックのように人物相関図やキャラクター紹介ももちろんあります。
ですがやはりこの新田先生のインタビューの濃さです。
ここを私は推したいと思います。
静かなるドン 完全データブックはこちら
中野店 わき