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幻の漫画少年 全リスト

文・相澤亮一

「漫画少年」と私(13)
わが国の戦後漫画史に欠くことの出来ない雑誌「漫画少年」は、創刊が昭和23年一月号で、終刊は昭和30年十月号である。八年10ヶ月の間に、増刊号7冊含む、計一〇一冊が刊行された。

数多くの漫画が連載されたが、手塚治虫の「ジャングル大帝」が、その中の最高傑作であると考える。連載開始は昭和25年十一月号で、完結したのが昭和29年四月号である。

「ジャングル大帝」は、もともと単行本で出す予定のものを、往年の「少年倶楽部」の名編集長加藤謙一氏の勧めで「漫画少年」に連載が始まった。雑誌の連載により、「ジャングル大帝」は、以後のストーリー漫画のさきがけとなったのである。

学童社版を含めて八回も単行本化され、その度にストーリーが変わったので、どの本の筋書きがまともなのか、手塚治虫自身にもわからなくなっていたようである。

また登場人物のケン一やメリーの顔や髪型は連載当時はターザン映画の影響をうけて描かれていたが、小学館のサンデーコミックス版(昭和41年発行)からは、現代ふうに修正された。
何回か書き直しているとはいえ、物語は次のように三部に分けることができる。

第一部
パンジャ(レオの父)が人間の罠によって殺され、エライザ(レオの母)がロンドンに運ばれる途中にレオが生まれ、レオがジャングルにたどり着くまで。

第二部
レオがジャングルの王子として、仲間たちのリーダーとして、ジャングルを変えようと努力をしながら成長してゆく少年時代。

第三部
青年になりライヤと結ばれ、二児の父親としての活躍と、動物を病気から救ってくれた人間との友情や恩返しなどの波乱に満ちた生涯を終えるまで。

「ジャングル大帝」はこれまでに三回アニメーション化され、カラーテレビアニメーションとして放映された。
子どもを意識し、大胆な色彩の使用や映像と音楽の同調、レオと森の仲間たちのふれあいなども描き好評だった。

そして、このたび1997年(平成9年)手塚プロダクションでは、第四回目のアニメーション製作にとりくみ、大人になったレオとライヤに子どもが生まれるところからを映像化したのである。

白いライオン、ジャングルの王者レオが初めてスクリーンに登場する。美しい映像と音楽で甦ったこの叙事詩が語るのは、可愛くて楽しいだけではない、動物たちの運命、懐かしくて新しい手塚ワールドの復活でもある。

テレビシリーズとは全く違うラスト。それはレオの失明そして死という衝撃的なものである。
レオは病気の動物たちを助けてくれた人間に恩を返すために、月光石があるムーン山への道案内をする。

苦しい旅の最後には人間の命を救うため自らの命を差し出す。これこそ手塚治虫が本当に伝えたかったメッセージであり、その本心ともいうべき命の尊さ生きることについてなのである。

昭和41年11月に発売された「交響詩ジャングル大帝」(日本コロムビアレコード)の中で、手塚治虫は次のように語っている。

「私が描こうとしたのは、大自然と生きるものとの、絶えることのない闘争と征服と挫折の歴史でした。
『国破れて山河あり』という言葉どおり、この物語のクライマックスでは、最後の舞台となるムーン山にいどんだ主役たちが、ほとんど死んでしまいます。

しかし、それは致命的な悲壮感よりも、本来への期待を歌い上げて終わりたかったのです。滅びても消え去っても、なおも新しい生命が自然に向かっていどむ力に敬意を表したかったのです」
”マンガの神様”手塚治虫は、いつも自然への愛と人間の愚かさ優しさを私達に教えてくれている。

この夏、私はジャングルの王者レオに会おうと思い、プレミアムチケットを手に入れ、懐かしさと新しさを求めて、映画館に足を運んだ。
しかし、公開される前からのPRの割に、オールドファンの私には、正直いっていささか期待はずれの作品だった。というのが偽らざる感想である。

昭和25年、中学生の私が夢中になって読んだのは「漫画少年」連載の「ジャングル大帝」だった。学童社版二冊も勿論愛読した。
その印象があまりにも強烈に残っていたためなのであろうか。
次に劇場版アニメーション「ジャングル大帝」の感想を述べる事にする。

一、原作のテーマは”命の尊さ・生きること”であり、アニメーションでもレオの生き方から現在の子どもの健全育成について考えさせる、というような手法がよかったのではないかと考える。

ますます複雑化している現代社会は、無秩序で節操のないジャングルに置き換えることが出来よう。
教育の世界では今、心の教育や、生きる力の育成が叫ばれている。
しかし、どうすればよいのか、その方策や目指す方向は見えてこない。

そこで、レオにスポットを当てレオの生涯を描くことを方策の一つとして提案したいのである。
現代の社会では失われていても、こども達や後世の人々に是非とも継承しなければならないこと、特に大人が真剣に考えて取り組まなければならないことを、レオの生き方を通じて示唆できるのではないだろうか。
前述したように、手塚治虫の作品に流れているテーマは、
”命の尊さ・生きること”である。

例えば、「ジャングル大帝」のレオは、生まれて間もない船の中から、何故母と別れなければならなかったのか。
回想シーンなどを取り入れて、そのわけを描いてみたらどうであろう。また、ラストで、レオが人間(ヒゲオヤジ)の身代わりになるシーンは、最近の人間の生き方からは考えられないことである。動物が本能的に出来て、人間に出来ないことがよくある。友情、思いやり、愛とは、優しさとは、生きる力・勇気とは一体何なのか。スクリーンを通じて、人間に問いかけてほしい。

二、キャラクターのデザインが、原作とアニメの絵ではかなりアレンジされていたことをあげておきたい。
オールドファンの私には、違和感が大変大きく感じられた。手塚治虫の絵の特徴である「まる」のイメージが失われていたことである。
例えばレオの顔は、原作には似つかず親しみが感じられなかった。やはり目がポイントであると考える。

三、アニメ化にあたり、描こうとした視点がボケて、弱くなったのではないか。最近の子どもへの甘いしつけと、 父親の分担の少なさ、子どもの成長に対する低い満足感などをとらえて、観ている人にもっともっと力強く訴えて欲しかった。
わが国では、子育てが危うい時代を迎えている。教育の場で、家庭でどうすればよいのか。
子育てを幼児期から、家庭から見直さなければならないところに来ている。

21世紀を担っていく子供たちには何が大切なのか、彼らは何をしなければならないのか。
また、大人はどのような支援をしたらよいのかを真剣に考えなければならない。
手塚治虫作品のテーマをもとに、漫画の力で日本を変えてみてはどうだろう。たかが漫画、されど漫画である。

漫画であるが故に、かえって日本を変革出来ると確信するものである。「ジャングル大帝」の映画製作に当たっては、何回も協議を重ね、検討が加えられたのであろう。 大人にも子どもにも、誰にでも受け入れられ、感動を与えるような作品にして欲しかった。
今後は教訓的でありながら、大人も子どもも楽しめて、しかも心を育てるような作品、「もののけ姫」を超えるような作品を期待したいものである。

ところで、天国にいるマンガの神様手塚治虫は、下界の様子をどのように眺めているのであろうか。
今回は、昭和30年に発行された「漫画少年」の六月号から十月(休刊)号までについて記す予定でいたが、変更して「ジャングル大帝」を取り上げてみた。

S30.04.20 4月号
「漫少」3月号について父兄の立場から感想文がよせられている。(以下本誌P.171〜P.173より抜粋)

オーソリティーとしての「漫少」が主体となって同業者を結集して自粛声明を出し、優良漫画絵物語作家の育成ばかりではなく、 積極的に俗悪作品を駆遂するために率先していただきたいと思う。

全優良出版社を結集して悪徳業者と俗悪作品をボイコットすることこそ児童漫画を正しく育てることになるのではないかと思う。(以下略)
この感想文から漫画のあり方について皆さんご意見ありませんか。



S30.04.30 増刊号
春休み臨時増刊オール漫画号(230余ページ) 読者の皆さんの大好きな力作・傑作の漫画ばかりを集めている。

「カンラカラ助」「だんご仙人物語」「だんご仙人(極楽編)」「愛犬クロ」「おじいさん」「大試合漫画三代記」(夢野凡天、古沢日出夫、福井英一、白路徹、中野正治、篠崎寿)「ガムちゃん」「愉快痛快漫画球場」「ゆかいなクロちゃん」(夢野凡天)「うたいたくなる春」(石田英助)「七つの真珠」(夢野凡天)感激物語「一片のパン」(北村寿夫、田中良)「少年遊戯室」(井上一雄)など...。



S30.05.20 5月号
投稿漫画家の優等生たちが、短編漫画やカットを担当し、昭和25年頃からの寄稿者たちは昇格して特集企画のページを描いている。

「白黒物語」(寺田ヒロオ)「平ちゃん」「維新前夜」漫画四人集「四つのベル」(寺田藤子、森安、永田)「鳥天狗の出るお山」(角田次郎)「ボクとねえちゃん」(小川明良)「漫画つうしんぼ」(構成寺田ヒロオ)「うぶ声」-漫画のあり方について-批判討論をただ<広場>として設けた頁、新漫画党や読者の声が載っている。



S30.06.20 6月号
先月号に引き続き「うぶ声」の頁が設けてある。「白黒物語」(寺田ヒロオ)「二級天使(石森章太郎)新連載「かばちゃん」(古沢日出夫)「たけくらべ」(根岸こみち)「ふとんの怪」(謝花凡太郎)特別名作動物漫画「森の王子さま」(新関健之助)「六月ゆかい大会」(どんぐり会、永田、芳賀、鈴木、飯田、野木、木村)「動物園は大さわぎ」(芳賀まさお、馬場のぼる、新漫画党、どんぐり会、合作)「芳賀、馬場先生をかこんである夜の編集室」「昔昔あったとさ」(角田次朗)など



S30.07.20 7月号
漫画詩「きもだめし」(田河水泡)、特別企画「漫画少年のできるまで」(芳賀まさお、どんぐり会、新漫画党)、「漫画図鑑 学用品」(新漫画党)、「漫画四人衆・おばけ特集」(寺田、藤子、永田、森安)、「三つ峠ハイキング」(森安、角田、永田、まる子記者)、「タロベの地の竜宮城」(角田次朗)「光にあたれ陽にあたれ」(藤子不二雄)、「ゴンちゃんと子猫」(小林正夫)、「ひねくれタク坊」(坂本三郎)、漫画探訪記、「1955年自動車ショウ」(森安直哉)、つづき漫画第1回「スットコトンちゃん」(うしおそうじ)、猿飛佐助(馬場のぼる)。



S30.08.20 8月号
こっけい詩「ぼくらの天国」(田河水泡)、 「うたうまんが、とんち裁判」(中野正治)、「漫画家自叙伝」(うしおそうじ)、「東京の伝説、浅草の観音様」(角田次朗)、 「特集 暑中お見舞」(新漫画党、寺田、藤子、森安)、「夏の漫画遊園地」(山下、角田、芳賀けいこ、鈴木、楠、坂本、寺田、藤子、大鹿、河本、斉藤健治、他)、 「漫画探訪、空の玄関羽田空港」(森安、藤子)、「新ここほれワンワン」(湖玉次吉)「柔道漫画 先生は強い」(角田次朗)、猿飛佐助(馬場のぼる)少年傑作よみもの集として「その夜の冒険」(赤川武助)、「荒野に叫ぶ」(橋本隆雄)、「アグラバの塔」(のぎみつお)が掲載されている。