今の時代、フィクサーと呼べるやうな人がどれホドゐるだらうか。 いや、そんなもんゐなくてもいいのだけど、なんだか時代が下がるごとにどんどん、どんどん、人間のスケールが小さくなってゐるやうで、正直一抹の寂寥感を禁じ得ません。 人口が増えればそれだけ個々のタマシヒも細分化されて、どんどん小さく細かくなっていくといふことなんでせうかね。 フィクサーと呼ばれるやうな人が世の中を益したのか害したのか、それは分かりません。 たださういふ世俗の善悪の評価を超えたところで、やっぱり我々凡俗のドギモを抜く、さういふ生き方には正直惚れ惚れさせられたりするのです。 そんな伝説的フィクサーの一人、杉山茂丸。 この人はいまではフィクサーとしてといふよりも、夢野久作のオヤヂ殿といふことで有名なってます。 またフィクサーといふと凄いオカネモチなイメージが強いですが、この頃の人はヤッパリ違ふ。 「自分が金を集めても、自分の懐には入れなかった。 晩年において歳末には、いつも、正月の準備に事欠く始末だったが、大晦日が近づくにつれて、方々から届け物が集まって。やれやれ今年も正月ができると家族が顔を見合わせたという(本書8頁)」 この頃の人は偉くなればなるほど質素で清貧なのが格好いいといふ価値観があったので、かうなるんですね。 今の新興ブルジョア、プチブルの方々の発想とは全く逆です。 今はカネモチになったら贅沢しなきゃ、みたいな陳腐且つチープなアメリカ的価値観が瀰漫してをりますけど、なんだか……無粋。 そんな無粋なこの21世紀に、今の価値観とは真逆に生きた人の渾身の生き様、そんなものに書物と通じて触れるのも、却って刺激的かも知れません。 (残念ながら夢野久作についての記述はあんまりありません)
(担当 山口ケン)
|
ご注意点
掲載の情報が販売情報の場合
- 掲載商品についてのお問い合わせは(指定がある場合は上記コメント内に記しておりますのでご確認ください)開店30分後からの受付となっております。各店の開店時間は、店舗情報にてご確認ください。
- 掲載の商品は店頭でも販売するため売り切れる場合がございます。
- 商品の探求は、専用の探求フォームをご利用ください。
掲載の情報が買取情報の場合
- 掲載の買取価格は商品状態、在庫によって予告なく変動します。