『スーフィー』イドリース・シャー著 久松重光訳 国書刊行会 2000年発行 470頁 ¥3675 本書は「スーフィズム」と呼ばれるイスラム神秘主義について書かれたものです(神秘主義とは、自己の内面に向かって通常の人智を超えた叡智を求める思想である、と云って良いでせう)。 一般的に知られてゐるイスラム教とは随分と趣を異にしてをり、それゆゑ原理主義的な人たちからはよく思はれてゐないやうです。 神秘主義といふだけに、ちょっと秘教的といふか中世的といふか、そんな怪しさがあります。 有名な「旋舞(セマー)」と呼ばれる、スカートをはいてグルグル回転しながら恍惚状態になる舞踏などはいかにも神秘主義的な雰囲気を漂はせてをります。 スーフィズムがさういふ秘教的要素をも包摂するといふことは、悪く云へば無節操、良く云へば寛容な面がある、といふことになりませう。 なので世間に流布する峻厳なイスラム教のイメージのみが必ずしもイスラムの全てではない、といふことが本書を御覧になればお判り頂けると思ひます。
(担当 山口ケン)
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