まんだらけまんだらけ小倉 1F 少年コミック手塚治虫について僕が知っているいくつかのことその4 私の作ったものは、百年たち、千年たって忘れ去られてしまうのですか？

今回紹介するのは潮ビジュアル文庫版「ブッダ」全12巻セットです。
言わずと知れた手塚マンガの代表作ですが、実在の人物をモデルにしていること、完結まで長い期間を要していること、宗教という重いテーマを扱っているにもかかわらず広範な読者を獲得していることなど、手塚作品の中でも独特の地位を得ている作品です。

「ブッダ」も最初の潮コミック版や手塚全集版、コンビニコミック版など様々な版がありますが、この潮ビジュアル文庫版だけの特典としては、全巻に識者による解説が付いているところです。呉智英や萩尾望都や夏目房之介などの鉄板路線から、珍しい所ではつい最近手塚先生と同じ所に旅立たれた筑紫哲也さんや、坂崎幸之助さんなどの解説もあります。

「ブッダ」の特徴としては、壮大なテーマとは相反する主人公ブッダの卑小さ、無力さも印象に残るシーンです。家族を捨ててまで旅出ったシーンや、友人タッタの亡骸の前で泣くシーン、晩年に病に苦しむシーンなど、読者としてはブッダが苦しむ場面こそが印象に残ります。

そして最後の最後。ブッダが亡くなった後、意識のみとなった彼が、神の化身ブラフマンに問いかける場面は、およそ悟りを開いた聖者とは思えない血を吐くような内容です。
「私の教えてきた教えは、百年たち、千年たったのち、忘れ去られてしまうのですか」という言葉は、まさに表現者・手塚治虫の欲望そのものに違いありません。
手塚先生と主人公とのシンクロ率が高い作品としては「ブラック・ジャック」があげられますが、このブッダにも手塚先生の影が色濃く投影されています。

お買い求めの際は、是非まんだらけ小倉店へお越し下さい。

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(担当有冨)