岩井の本棚 「マンガけもの道」 第8回 |
コックリさんと病院とキツネ
(図1)
そういやなんで10円玉なんだろう
伊藤理佐の「ももちん」に、女子中学生がこっくりさんを放課後にやって自分の初体験や好きになる人、 結婚するのはいつ? みたいなことをコックリさんにきく、という話(図1)。
しかし2004年の現在でも、コックリさんをやっている子供たち、なんているのでしょうか?
社内の不特定少数の人間に聞いたところ、みな小中学生くらいにやったっきりで、 社会人になってからも頻繁にコックリさんと会話して震えるような電波な不思議ちゃんはいないようでちょっと安心でした。
僕の中ではコックリさんといえばつのだじろう。つのだじろうといえばコックリさん、くらいのイメージです。
これはあくまで僕の読み間違い、理解不足ととらえていただいて結構ですが、 つのだ先生はテレビにもよく登場するし、トキワ荘生き残りメンバーとして名前も顔も売れていますが、その作品内容が世間にきちんと広まっていると思えません。
(図2)
キツネジャンプは垂直と手の形がポイント
(図4)
常人では思いつかない乱暴の仕方
その作品世界はあまりにアナーキーで危険。たぶん子供に買い与えてはいけない、手の届かない所に保管してくださいくらいの注意書きが必要。
まぜるのも目に入れるのも危険です!
たとえばつのだ作品のコックリ話には必ず精神病院と錯乱者が登場。
人死にがでます。
最も有名な心霊作品「うしろの百太郎」では「コックリ殺人編」と「コックリ憑依編」とふたつあり、 なかでも「コックリ殺人編」はそのファンタジーのレベルの高さ、群を抜いてます。
(図3)
ちょっと美味しそう
(図5)
デフォルト時
(図6)
キツネ70%混入
(図7)
キツネ100%時、最凶
そしてコックリに参加した生徒達を次々と殺す・・・。
キャーブルブル、ガタガタ、こわい! こわいですよ?
うそです!
でもこっから先は本当にこわい!
先生はキツネにとりつかれてまず何をするかというと、(図2)。
まずゲーッツと叫んで、変なジャンプをします。
次に図3。
なぜか石を食べます。
そして女教師に噛み付きます。(図4)。
みんなは先生がくるった! くるった! と大騒ぎ。
ちなみに普段はこんなに誠実そうなのですが(図5)、キツネに取り付かれたら こんな顔に(図6)、さらにもっとキツネ化して最後にはこんな顔になります(図7)。
もうこれは霊うんぬんではなく別人です!ちなみに図5はつのだタッチではなく、たぶんアシの人の絵。キツネ化した時はつのだタッチ。
これはどういう使い分けなんでしょうか?
「一般人はオレが描くまでもねえ、キツネが取り付いたら、さあオレの出番だ!」 と、つまりそこは「おいしい部分」なんでしょうか?
(図8)
隔離ですか
(図9)
手が勝手に動く!
つづく「コックリ憑依編」では女子高生が何でかスペインのフラメンコ使いの 女の霊に取り付かれ、一日中腕が動いて、自己主張をはじめる、という、早くも きちんと読解しようという気が失せるシチュエーション(図9)。
霊にとり付かれた女子高生は周囲の無理解で精神病院に入れられるのですが(またか!)、そのシーンが最高にイカす!
「ああ、わかりましたわかりましたそうですね!」
「さあお部屋へ行っておねんねしましょうね〜〜っ!」(図10)
(図10)
全肯定、そしておねんね
ちなみに2004年の現在、「ブラックジャックによろしく」(佐藤秀峰)では精神 医療に対してのあやまった偏見、そして病気への正しい理解を啓蒙している 真っ最中であります。
おそらくこのコックリ表現はそういった精神医療への偏見に満ちた旧時代的な表現 ・・・あわわ、いまやめったに見かけないレアーなコンテンツであることは否めません。
しかも、女子高生はフラメンコ女に取り付かれたまま終り、「周囲の無理解は怖いものだなあ」みたいなラストでメデタシメデタシ、ですが、 腕は一日中動いたままだし、スペイン女も取り付いたままですよ。
誰か一人くらい「何で日本なのにフラメンコ女なんかに取り付かれるの?」と突っ込んでくれたら気もラクだったんですがね。
(図11)
コックリさんにだまされる
(図13)
ある意味最も恐ろしいセリフ
(図12)
またキツネジャンプ
スナックのバーテンがコックリさんに競馬の予想をしてもらう、という、投げやりな話ですけど、コックリ さんにだまされて貯金を全部失って錯乱(図11)、取り巻き連中がコックリさんに、あのバーテンどうなんすかね?と聞いたところ「キツネになる」とお告げが!
またキツネかよ!
であとはパターン通りキツネジャンプして(図12)、女を「神のお告げじゃ〜〜っ!」 といって刺し殺す(図13)。誰一人イイ目にあってない、ヒドイ結末です。
しかもオチが「これは実話です! といってもよいほど十分にありえる話なのです!」 「興味本位でコックリさんをしないで下さい! 実際にはほとんどの人が低級霊・悪霊 のために悩まされ苦しみ、ひどい目にあっているのです!」
ちなみに今回10人くらいにコックリ経験聞きましたが低級霊に取り付かれてキツネジャンプした、という人は誰もいませんでしたけどね! ていうかその前にこのタイトル! 「ときめきの墓」? 墓なんかときめくわけないじゃないですか!
コックリさんがいかに恐ろしいかわかりましたでしょうか?
つのだ説をとると、コックリさんやった小中学生のほとんどが低級霊に取り付かれて病院いきになっているハズで、 そんな一大事がどうして社会問題にならんのか不思議でなりません。
なにせ「これは実話です! といってもよいほど十分にありえる話なのです!」からね!
つのだじろう先生の最高にマッドでフルスロットルな著作は本店においてあります!興味を持たれた方は是非。
※この記事は2004年11月9日に掲載したものです。
(担当岩井)