岩井の本棚 「マンガけもの道」 第28回 |
やった、リアル本棚化!でも場所はL7-8
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最初のころは更新頻度がやたらと高かったのに、ここ一年は忙しさからかまるで更新できてないのが我ながら情けない。
また更新しても、このコーナーはおなじ本店の同僚からは「売上に繋がらないコーナー」として評判がイマイチよくなかったりします。
ぼくのコラムがきっかけになって「美味しんぼ」棚がボコボコの穴だらけになった、という話も聞きません。
じゃあ売上に繋がる仕事をしよう、と意気込んではじめた「本店レポート」も、 1時間以上使って840円の本1冊売るための紹介文を書く・・・みたいな(本店レポート第11回)。明らかにC/P比悪すぎです。
たとえば前回の「銭っ子」編は書き上げるのに3時間かかり、 さらにHPの中の人が編集に朝の4時までかかった、という代物。
それでいて「銭っ子」から売上に繋がったものはゼロだったりする。あまりにもヒドい話です。
かと思うと、本店の後輩・・・竹下「映画・アメコミ」コーナーとか、 久保田「エログロ・糞尿」コーナーとか、平嶋「ガンダム」コーナーとかはきちんと売上つくってたりします。
あきらかに先輩として示しがつきません。焦りを感じて部屋を無駄にウロウロ歩いてみたりしてるうちにひとつ思いつきました。
実は「岩井の本棚」は名目だけで常設化されておらず、映画やエログロコーナーと違い、リアルな「棚」というものが存在しません。
じゃあ棚を作ってチョイスした本を並べればいいんだ。そうすれば売上につなげることができるぞ・・・。
さっそく息を荒くして本店2へとズンズン歩を進め、担当に「おれにも棚をくれよ」といったところ、 彼は僕の目を見ず、なぜか放心したようにあらぬところを見つめた後、しばらく悩んで、あきらめたようにこういったのです。
「L7−8とL7-9棚なら使っていいですよ」
「それどこ」
「こことここです」
絶句しました。
L7-8っていうのは棚の番号なんですが、目で追うと棚の最下段じゃないですか。
あからさまに目立たないうえ、特設コーナーとしては必須の「目線の位置」ですらない棚なのです。こんなところコーナー化したって誰が気がつくんでしょうか?
「もうちょっといい場所があるだろう、こことかダメなの?」
「そこはちょっとダメです」
粘ってもダメ。
仕方がない、この目立たないL7-8と9の2棚を、なんとか盛り上げていくしかないのです。 あまりに目立たない場所なので、たぶん店内のスタッフにも無視されると思う。泣きそうになってきた。
とりあえずやっとこもらえたリアル棚に、出る本はこんなところですか。
「ちゃんぷるるー」にったじゅん(図1・2)
「えーマジ童貞!?」「童貞は小学生までだよねーキャハハハ」で有名な、 ファンキー童貞マンガで有名なにったじゅん先生。
初単行本は童貞4部作のはるか前、じつはビブロスのカラフルBeeで連載していた作品だったことはあまり知られていません。
絵は00年以前の白い絵で、たとえるなら陽気婢みたいな雰囲気ですか。
ヤリまくり女子が童貞男子を味見する・・・というにったじゅん黄金パターンは健在です。やや日焼けが刺していて840円。
「ノードッグ・ノーライフ」
「ずーふぃりあ・しんどろーむ」栗田勇午(図3・4・5・6)
目にとまった最初の理由はというと、作者名が「美味しんぼ」の栗田ゆう子のモジりだったから。
現に筆者あとがきには栗田さんが永遠のマドンナ、とあります。
ですが、栗田さんがマドンナ・・・の世界観から想像される穏健さと作品世界は大違い。
ビミョーに浦沢直樹キャラ似の娘が、過剰にイヌに愛情を感じた挙句、イヌの激しいピストンに絶叫し中出しされまくる、というブッとんだ獣姦マンガです。
一作目「ノードッグ・・・」は全て犬×娘ですが、二作目「ずーふぃりあ・・・」は犬にはじまりブタにミミズ、さらには陸ガメとのセックスが描かれます。 さすがに対カメは初めて見ました。
フラミンゴ系とはこういうものだと力強く吠えるその気概には沸き立つものがありますが、ヤラれる娘が浦沢直樹キャラなのは何故。
そこにどんな複雑な事情があるのでしょうか。獣姦でありながら陵辱ではなく和姦、特に女性が犬に対して見せる全肯定的な愛情が印象的。たぶんこの人は天才だと思う。
(図7) |
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「牝母」マスタングR(図7・8)
出てくる女性がみな乳首が長くて、しかも母乳をビッシャアと排出する・・・とかつて取り上げたことがあるマスタングR先生の作品「母性煩悩」。
あれから2年。より乳首は長く黒くそしてグラマラスに、さらに相手の男子はせいぜい小学生高学年と、どんどん幼くなってました。
これを進化と捉えるかどうかは判断が難しいですが、汚臭フェチが随所に表現されるようになってきたのは進化です。
このまま行くとこの人、ライトなライトな三条友美になるんじゃないでしょうか。
それが正しいかどうかは別として、イイ道であることは確か。それだけが大事です。
余談ですが、太りの一員として、作中のセリフ「先生、太った男の子の臭いが好きでしょうがないの」には久しぶりに泣きそうになりました。682円。
「コミック失楽天 鳴子ハナハル特集」(図9)
日本はおろか台湾や香港など中華サイトでもその絵が絶賛される鳴子ハナハル。
成年系の単行本がまだ発行されていない現在、同人誌以外では、過去作をまとめて読むには雑誌総集編の「失楽天」しかありません。
発売と同時に専門店どころかコンビニまでも瞬殺したのは伝説です。
巻末にあるプレゼントの直筆色紙、当った人すごくラッキーですよねえ。
ええ、少なくともみやびつづるとか琴吹かづきのよりははるかにラッキーです。
読めればいい人用の表紙はがし跡アリのもの(2100円)と、内部保護シールが取られていてもダメージが著しく少ないもの(2310円)の2点と、鳴子ハナハル表紙・収録作アリの快楽天も3冊用意してあります。
「ザ☆花Qワールド」花見沢Q太郎(図10)
ロリ美少女の描き手としてはいまや古参となる花Q先生。 97年発行のCD−ROMつきムックがこれ。 カラー短編が数多く収録されていますし、めずらしく本人の生姿が散見できます。
発行が古いので絵的にもももいろさんご以前のゆらゆらした描線になじみがない世代には受け入れられないのかもしれないけれど、 これでしか読めない作品も確かあったハズ。
CDは開封済み、開封に伴う小キズは目立たない程度。1260円。
「ホットミルク86年9月号」相沢真理掲載号(図11・12)
ウィキペディアにも記してあるように、藤沢とおるはかつて「相沢真理」名義で成人コミック作家をしていました。89年のマガジンデビューのちょっと前まで それは続いており、単行本も発行されているのですが(未見)、実際にその絵が公開されたことはほとんどなかったように思います。
これがそれ。見てみたら確かに「湘南純愛組」のころの荒削りな絵の雰囲気も感じさせます。
いま読むと正直絵も内容も稚拙ではあるのですが、相沢真理=藤沢とおるをきちんと検証したい人にこそ読んでもらいたいですね。
「エロマンガ・スタディーズ/「快楽装置」としての漫画入門」永山薫(図13)
話題の書が入荷しました。成年コミックの歴史から隆盛、そして妄想の細分化、さらには日本人の性意識の変化までが成年コミックというフィルターを通して語られています。
個人的には性器修正の濃度の変遷やCG化における影響、また03年以降気を吐いたコミックLOについてももうすこし触れてほしかったところです。
しかしここまできちんと成年コミックの世界について語ってくれた本はなく、大変な労作といます。1260円。
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「まんが 新・あのこと」集英社(図14・15・16)
性の知識がまだまだ不足していたネット社会前夜。
わたしの性器ってヘンなかたちじゃないかしら?と悩む女子や、 性器の裏にできたイボはエイズだからじゃないだろうか?などと疑心暗鬼に陥る男子のために作られた性教育ガイドマンガ。
内容的には見るべきところは少ないですが、なぜか作中、イラストを何枚か丸尾末広が担当しています。
それ以外のイラストはほとんどギャグ系作家で、丸尾末広だけ異常に浮いています。
当然この絵は画集にも収録されてないだろうと思います。
それにしてもエイズ感染を注意したいあまり、 いちばん気をつけるのは注射器の回し打ちと買春ツアーだ!! と力説するのは、まちがってはいないんだけれど、 この本の読者層がほぼ処女・童貞のティーンだということを考えるとなんかアレです。
90年代のティーンたちは性行為する前に、すでに注射器の回し打ちなんかしてたんでしょうか。ずいぶんリキッドな人たちですね。840円。
「俺のケツをなめろ! EAST FRONT 1944」天下布武かあどげえむ(図17)
第二次大戦の独ソ・東部戦線を舞台にカードゲーム化したもの。
ルールを2回くらい読んだのですが、非常に難解で理解できません。
サイコロが4つも付属しているのも不穏です。
4つ同時に必要とする場面があるのでしょうか。
あと3名から6名がいちばん楽しめる、とありますが、戦車マニアが6人も一箇所に集まる、なんてことがホントにあるのでしょうか。
喜屋ホビー内ですら、6人は容易でないと思う。たとえば僕は割と戦車好きですが、このゲームをやろう、と誘えそうな相手は誰一人いません。
ドイツ戦記ものといえばこの人、の小林源文が絵を担当。マニアにはたまらないでしょうが、実際にプレイするにはハードルが高すぎる気がする。630円。
(図18)
「えの素トリビュート」榎本俊二ほか(図18)
モーニング連載中の「ムーたち」では珍しく下ネタを封印している榎本俊二。
「ゴールデンラッキー」では肉体表現の限界を極め、「えの素」では下品を極め、つぎは何を極めようというのでしょうか。
本書は「えの素」の傑作エピソードをチョイスした抜粋集ですが、抜粋した編者のゲストページがやたら豪華。
寺田克也のと鶴巻和哉の描いた葛原さんがサイコーです・・・が、上野顕太郎がここではひどくツマらなく目障りで和を乱してる感が強いです。
うえけんは好きな作家だけに、こういう姿は見たくなかった・・・のが正直なところ。
全篇チンポコとうんことゲロ、オナニーばっかりでおなか一杯。
「えの素」よりも完成された下ネタギャグはないと断言できます。525円。
(図19)
「川畑聡一郎 ALL WORKS + ALL WORKS BOX」(図19)
「S60チルドレン」たった一作を残して我々の前から去ってしまった川畑聡一郎。
子供の世界で何気なく起こる出来事を話の中心としつつも、子供ならではの残酷さや、 最終的には大人の世界に太刀打ちできない無力さ、閉塞感をこれほどうまく出来た作家はいないでしょう。
3巻以降はいじめ自殺や虐待にも触れています。
本品は通信販売限定の作品集「ALLWORKS」と、S60チルドレン全4巻を収納できる組立ケースのセット。
買い逃した方が多かったと思います。未開封。
1,575円。
(図20)
(図21)
(図22)
「力人伝説」全3巻 小畑健(図20)
小畑健の新連載がもう来週から始まりますが、小畑氏過去作の中でおそらく今後再版かからないだろうと思われるのが「力人伝説」。
貴乃花親方洗脳と激ヤセ、若花田の迷走、藤島親方離婚と死去、曙のカエル姿ダウン・・・ といった大相撲と花田家もろもろの美談や伝説が崩壊したため、 関係者全てにおいてこの本を復刻するメリットがゼロだからです。
この本今読むと「こんな素直ないい子がヘンな整体師に洗脳されることになるなんて」と現況に対して驚きを隠せません。
787円。
「銭っ子」AC版全3巻(図21)
「機会があれば読んでみたい」と考えている人は割に多いものの、 現在流通中のものが存在せず、チャンピオンコミックス版も3〜4000円ほどするのでなかなか手を出せないでいる・・・のが現在「銭っ子」を取り巻く状況でしょう。
わりと手ごろな金額で読める秋田コミックスセレクト版を用意しました。
このあまりのすさみ感は稀で、はからずも冷え切った関係になってしまった異性に、 クリスマスプレゼントとして渡すだけで「オレ、これからは銭に細かく生きてくことにしたから」という三行半がわりになる。
別れ話を切り出す手間が省けます。1575円。
「犬神家の一族」つのだじろう(図22)
リメイクされ公開間近の「犬神家の一族」。
犬神家といえばゴムマスクの佐清ばかりが思い出されますが、リメイク版も76年版にソックリ。
ムダな部分で律儀ですね。
ちなみに本店の竹下さんは犬神家の話をすると必ず、 作中人物の青沼静馬のモノマネをやってくれますが、理解できるのは僕だけで、他の人は首をひねるばかりです。昭和も遠くなりにけりですね。
角川映画全盛期にコッソリと発表された、つのだじろう作のコミック版「犬神家」があるのですが、 佐清がゴムマスクじゃなくアイスホッケーのお面みたいなマスク。髪もはえてる。
それだけならいいけれど金田一はスーツ姿で加藤芳郎みたいなナリだし、犬神家は犬神族の末裔で、 サバトみたいな儀式で犬の首をブッタ斬ったりするっていうオカルトじみた話になってて、ストーリーがまったく違う。仰天しました。
つのだじろうはその後も「悪魔の手鞠唄」など映画になった横溝作品を、 またもや原作をまったく無視したストーリーでマンガ化。当時まだ横溝老は存命中でしたが、 ストーリーが全然違うマンガばっか描くつのだじろうに対して胸中どんなだったかは知るべくもありません。315円。
今回出すのはこんなところです。商品が売れたら少しづつ補充していきます。
定点観測するほどでもないけれど、すこしでも出したものが売れてくれると、やがてはL7-8棚から脱却できるので、ご愛顧よろしくお願いします。
ちなみにL7棚へのアクセスは次の通り。
JR中野駅下車、北口から中野サンモール商店街をまっすぐ進み、約5分でブロードウエイビルにつきます。
そのまま進むと見えるエスカレータで3Fにあがり、25メートルくらい歩くと右手側にショーケースが並んでいる本店2が見えます。
そこで90度ターンして本店2入り口に。
入り口から1時の方向に5歩進み、ヨイショとかがむとそこがL7棚です。
大変わかりにくいところにあるので目印に海原雄山を貼っておきます。
雄山で思い出したのですが、来年1月にフジの特番で放映される実写版「美味しんぼ」。
気になる雄山はだれかと思ったら、なんと松平健。
しかも公開スチル見る限りは激似。雄山ヘアーもきちんと再現してる。
なんといっても和服が似合いそうです。だって殿様だもの。
山岡役の松岡昌宏とか栗田ゆう子役の優香なんかフッ飛ぶ位のその雄々しさには期待大!です。
※この記事は2006年12月1日に掲載したものです。
(担当岩井)