岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第11回

「子ランチ」

子どもの頃しか食べられない食べ物、はいくつかあるものの、ファミレスで年齢制限までかけられるメニューといえばお子様ランチくらいしか思い当たりません。
一般的なお子様ランチ、といえば、小旗の立ったケチャップライスにハンバーグ、ポテトサラダに赤いソーセージ、デザートにプリンとオレンジジュース、でなんかオモチャがつく、といった感じでしょう。
栄養のバランスも取れていて子どもが残すことのないメニューという気配りが感じられます。
実際に子どもが好きそうなメニューかどうかを考えられていない、と言うことは案外あります。
僕が小学校2年か3年くらいのときに町内会で子どもお楽しみ会みたいなのが開かれたときのメニューがすごくて、未だに忘れられません。
どんなものかと言うと・・・。
けんちん汁
ちらし寿司
山芋の千切りっぽい物
ニラの卵とじ
きなこ餅
いま思い出してみても全然子どもが喜ばないメニューですね。
横文字のメニュー全然ないですよ。
老人ホームでのメニューだといってもよい。
最後のきなこ餅、は餅つき大会が行われたからです。
町内会ではそれ以外でも豚汁とやっぱりつきたての餅、とか、なんだかヘンな献立ばかりが思い出されます。


(図1)
「伝染るんです」5巻には、「コック長が子どもをあまり好きじゃないんです」という破滅的な理由でお子様ランチはださない、と凶悪な「子ランチ」が登場します。

これ、すさまじい、子どもに対する悪意。
それのみです。
ここまでヒドイとむしろ食べてみたいくらいです(図1)。
なにしろ皿じゃなくてコップに詰め込まれており、おかずはメザシとさつま芋。
サラダに値するのは大根の葉っぱ。
主食のケチャップライスは麦飯で、具はニラとモツ。
デザートのバナナは皮がなく剥き出しのまま輪ゴムでくくりつけられていて、旗は日の丸どころか「首」の一文字。
おまけのミニカーはケチャップライスの下に埋もれていてご飯粒だらけです。


(図2)
子どもがキライな物のみで構成されてて、食べるときにはクチャクチャと音がする(図2)。
いやあ、いいなあ。この懐疑心こそが吉田戦車の視線のあり方なんでしょうね。
通常普通だと思っている部分や常識を疑ってみる。
大人が子どもを嫌ったからといってそれをメニューに反映させたりはしない。
悪意があるならお子様ランチの名前から「お」と「様」は抜かなきゃおかしい。
メニューは子どもの嫌いなもの、盛り付けもかわいげがないもの、オモチャは使えない・・・。
よくある「子ども連れ入店禁止」のラーメン屋も、いっそ子供用にマズいラーメンをわざわざ出せばいいのに、と思うくらいです。

それにしても吉田戦車の作品には、この「伝染るんです」から最新「殴るぞ」まで、数多く食べ物が登場します。中でも地方の怪しい食べ物を空想した「ぷりぷり県」が食べ物的にはマスト。「部員煮」「暗黒星人」でピンときた人は、本店2へ急げ!

※この記事は2004年7月17日に掲載したものです。
(担当 岩井)

お問い合わせ (営業時間:12:00〜20:00)

まんだらけ中野店(詳しい店舗地図はこちら)
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15
TEL:03-3228-0007 / e-mail:nakano@mandarake.co.jp